手を洗う場所をタンクの上ではなく、別の場所にしているのが手洗い器付きトイレの特徴。なぜ、そのようなことをするのか。
理由はふたつある。ひとつは、掃除を楽にするため。もうひとつは、手を洗いたいとき、トイレの水を流さなくても、水が得られることだ。
それぞれをもう少し詳しく解説しよう。
掃除が楽になるのは、水はねが少なくなるから。タンク上部の皿に水を流す方式では、どうしても水はねが生じる。手を洗うとき、そして水がお皿にぶつかるとき、
水が跳ねて床や壁に散る。それが、汚れの原因になるのだ。
さらに、水を受ける皿に水垢が付き、なかなかとれないという弊害もある。手洗い器を別のところ(もっと、手を洗いやすいところ)に移すと、水はねによる汚れが減少。
さらに、掃除が楽なるため、ボールに付く水垢も気にならないというわけだ。
もう一つ、必要なときに必要なだけ水を流す事ができるため、結局は水資源の節約になるという意見もある。もっとも、本当に節約になるかどうかは水の使い方によるだろう。
手洗い器付きのトイレにはもう一つ、長所がある。それは見た目もお洒落であること。リッチな印象もある。
これに対し、最大の欠点は広いトイレ空間が必要な点だ。トイレが狭いと、手洗い器を別にしたくてもできない。狭いトイレ空間に無理矢理手洗い器を付けてしまうと、
かえって使いにくく、掃除もしにくくなる。だから、ゆとりあるトイレにしか設置できない点だ。
もうひとつ、手洗い器一体型の通常便器を設置するときと比べて工事費用が高くなる欠点もある。だからこそ、リッチな印象を与えるのかもしれない。
なるべく居室をゆったりつくるため、トイレを狭くしたのがかつての集合住宅。それに対し、最近の集合住宅はゆったりした広さをもつものが多くなった。
その結果として、ゆとりある広さで、手洗い器が別になったトイレが増えてきたようだ。